NTTソノリティが展開するオープンイヤー型ヘッドホン「nwm ONE(ヌーム ワン)」。 耳を塞がないという新しいコンセプトで、デスクワーカーの間でもかなり注目されているプロダクトです。
僕も自宅の作業デスクでじっくり使い込んでみたんですが、スペックシートの良さそうな雰囲気とは裏腹に、実際に使うと「圧倒的なメリット」と「明確なトレードオフ」が同居している、かなり尖った製品だなと感じました。
いつものように、実際に使って見えてきたリアルなところをレビューしていきます。
外観:先進的なコンセプトと質感のギャップ

デザインの最大の特徴は、耳元が中空に浮いているような、どこか未完成でメカニカルなシルエット。 ミニマルなデスク環境において、「未来感」とか「ちょっとしたハズシの要素」として置いておく分には、視覚的なアクセントになってくれて悪くないなと思います。
ただ、プロダクト単体としての「モノの高級感」という点では、4万円という定価を考えると正直ちょっと物足りないのが本音です。全体的にプラスチッキーで荒削りな印象が拭えなくて、大手ブランドが磨き上げてきた「所有欲を満たしてくれる洗練された佇ましさ」の域には、まだ達していない感じ。良くも悪くも、まだ「技術見本品」のような雰囲気を残しています。
使用感:ヘッドホン特有の「重さと蒸れ」からの完全な解放、だけど…

本機の評価が一番跳ね上がるのは、やっぱりこの「使用感」のところです。 一般的な密閉型ヘッドホンだと「耳が蒸れる」「頭や首が重い」というストレスがどうしても付きまといますが、約185gという異例の軽さと優しい側圧のおかげで、首や肩への負担は最小限に抑えられています。
何より、耳の穴が完全に開いている(非接触である)というアドバンテージは素晴らしいです。長時間つけっぱなしにしても耳が痛くならないし、部屋のインターホンや家族の声、周囲の環境音が100%自然に拾える安心感は、自宅の作業デスクにおいて無類の快適さをもたらしてくれます。
ただ、この軽さと快適さを優先したトレードオフとして、ホールド力はかなり控えめです。デスクワーク中に少し深めに下を向いたりすると、本体が前後にわずかに滑り落ちそうになる感じがあります。 本機はツイーターとウーファーを別々に駆動する2Way仕様を採用しているため、耳穴に対する角度が数ミリズレるだけで、急に音量が下がったりバランスが崩れたりします。この「意外とシビアな位置調整」が必要なところは、使っていて少し気になるポイントかもしれません。
あと、液状シリコーンゴム製のイヤーパッドが「ユーザー自身で交換できない仕様」になっているのも、長期運用を考えるとちょっと不親切かなと感じました。
音色・音質:意外な基礎体力と、ベースにある「シャカシャカ感」

独自の音漏れ抑制技術「PSZ」を採用している本機ですが、実際に聴いてみると、その奇抜な見た目からは想像できないほど「普通に、しっかり聴けるサウンド」です。音の厚みも意外なほど感じられて、細かい音まで丁寧に拾い上げてくれる実力は持っています。
ただ、物理的に耳が開いている構造上、全体的な音のトーンとしてはどうしても音が軽く、シャカシャカとした質感がベースにあることは否めません。 じっくり聴き込むと高域と低域のそれぞれに不自然な強調感(ドンシャリ感)があって、このベースの音の軽さと高域の強さが合わさることで、人の声を聴く際に「サ行の刺さり(歯擦音)」が耳の奥にチクチクと響く原因になっています。
とはいえ、ポッドキャストやラジオ、YouTubeの解説動画といった「音声コンテンツ」をゆるく流す用途(BGM運用)としては、しばらく使い込んでみると、このフットワークの軽いシャカシャカ感が逆に耳に残らず、「そこまで嫌じゃないかも」と思わせる絶妙な収まりの良さもあります。アプリのイコライザー(EQ)である程度マイルドに補正できるので、工夫次第で付き合っていけるポテンシャルは秘めているなと思います。
ただ、完全開放型なので屋外の騒音下だと音が簡単に打ち消されますし、音量を上げると高音域特有のシャカシャカ音が周囲へ音漏れし始めるので、基本的には「静かな室内専用」と割り切ったほうが良さそうです。
通話機能と接続性:リモートワーク用途としてはちょっと物足りない?

在宅ワークでのWeb会議向けとしてもアピールされている製品ですが、マイクの環境ノイズ低減性能はかなり脆弱な印象です。静かな室内ならハキハキと声を拾ってくれますが、周囲の雑音を劇的にカットしてくれるタイプではないので、外での通話や騒がしい環境には向いていません。
また、接続環境(デバイスや電波状況)によっては、マルチポイントの切り替えが少しのんびりだったり、突発的な通信ノイズを拾いやすい側面もあります。特にクラムシェル運用のMac環境など、電波が遮られやすい状況だと音飛びが発生しやすい傾向があるため、基本的にはiPhoneなど電波環境が良いデバイスと連携させるのが無難かなと思います。
まとめ:用途を「ながら聴き」に特化させるなら、買いの選択肢
nwm ONE
唯一無二の装着感
「耳の穴の完全開放」と「185gの超軽量」による快適さは唯一無二。
ただ、オープンイヤーゆえに音質は軽めでシャカシャカ感がベースにあり、クラムシェル運用のMacなど環境によっては音飛びしやすい繊細さもある。
万能機ではないが、優待等で安く手に入るなら「耳を休めながら音声コンテンツを流す専用機」と割り切って試す価値のある、新しいアプローチのプロダクト。
定価4万円という価格設定や、折り畳みができず非防水といったハードウェアの割り切りを考えると、これ1台ですべてをこなせる万能なワイヤレスヘッドホンを求める人には、少しハードルが高く感じられるかもしれません。
ただ、僕の場合は株主優待を活用して15,000円引き(実質25,000円前後)で購入できたため、この価格を前提とするならば、一きに満足度は高くなります。
最高峰の音質や強力なノイズキャンセリングを求めるプロダクトではありません。ですが、何時間もデスクに向かう中で、「耳の穴を完全に休めつつ、ノーストレスで音声コンテンツやBGMをながら聴きする専用システム」と割り切るならば、この軽さと圧倒的な開放感は唯一無二の選択肢になります。
物理的な快適さを優先して、用途を完全に特化させて使い倒すことに価値を見出せるか。それこそが、nwm ONEという挑戦的なプロダクトを評価する上での分岐点になりそうです。


